一覧へ戻る

世界の鍋料理 ~アジア篇~

日本だけではなく世界中のさまざまな国に、ひとつの鍋を囲んで食事を楽しむという文化があります。他の国の人たちは、どんな食材を使って、どんなスタイルで鍋料理を味わっているのでしょうか。国や地域の特色が見られる鍋料理を求めて、世界をめぐる旅を始めましょう。今回のテーマは、アジアです。

アジアの国々でも、さまざまな鍋料理を味わうことができます。
日本ではあまり知られていない調味料や香草を使っていることも多く、見た目だけでは味の想像がつかない場合があります。旅先では、そんな未知の味にトライすることも楽しみのひとつですね。そして、一度ハマると同じ味を求めて日本国内で"現地味"のレストランを探したり、輸入食材を手に入れて"再現"するために試行錯誤を繰り返したり。そんなアジアの鍋料理から、いくつかご紹介しましょう。

 

タイ【チムチュム】

タイ料理は近年、現地でも日本でも「イサーン」と呼ばれるラオス国境に近い東北地方料理の人気が続いています。
鍋料理も、以前からおなじみのタイスキやムーガタに代わって、香草類をたっぷり使った「チムチュム」が人気。都市部ではチェーン店も展開しています。「チム」も「チュム」も「ちょっと浸す」という意味で、ラオス発祥の料理だそうです。

鍋の具材をスープにさっとくぐらせて、にんにくや唐辛子の効いたタレでいただきます。スープはナンプラー、ナンキョウ、レモングラスなどが入ったハーブの風味豊かな味。具材は肉、魚介、野菜など多様です。

参考:バンコクナビ https://www.bangkoknavi.com

 

モンゴル【ホイツァイ】

内モンゴル地方の伝統料理で、野菜と羊肉が入った鍋料理です。
「ホイツァイ」はモンゴル語で「野菜」の意味。現地では貴重な食材である野菜とキクラゲが入るので、昔は宮廷料理だったそうです。そのほか、羊の肉やモツ、モンゴル春雨、じゃがいもなどが入ります。じゃがいもは一度揚げてから入れるため煮崩れしにくくなっています。しょうがや八角、唐辛子とともに入れる「韮菜花(ジョウツァイタイ)」はニラの花を発酵させた調味料で、中国料理にも使われます。

参考:『世界の鍋』服部直美著(情報センター出版局)

 

マレーシア【バクテー】

漢字で記すと「肉骨茶」。
といってもお茶ではなく、シナモン、胡椒、八角、クローブなどが入ったスープで豚肉を煮込んだ料理です。マレー半島南部の町クランで、労働者たちが肉の骨からとったスープをお茶代わりに飲んでいたことから、この名がついたのだそうです。スープは茹で溢してあるのであっさりめ、味わいもごはんに合う醤油味です。近年は、具だけを取り出して炒めた「ドライバクテー」も人気があるそうです。

参考:
『マレーシアのおいしい家庭料理』馬来風光美食 エレン著(マイナビ)
CREA WEB https://crea.bunshun.jp

 

ネパール【ギャコック】

もともとはチベット料理ですが、ネパールでおなじみの鍋料理だそうです。「ギャコック」に使うしゃぶしゃぶ鍋に似た鍋は嫁入り道具のひとつで、裕福な家庭では贅を尽くした宝飾品のような鍋を持たせるのだとか。もともとは貴族たちが祝いの席で食べた宮廷料理だそうです。現地ではネパール岩塩、ジンブー(にんにくの一種)で香りをつけ、骨付き鶏肉やヤクのスペアリブを入れて煮込みます。こってりした濃厚なスープは日本人にも親しみやすく、ハマる人も多いようです。
参考:『世界の鍋』服部直美著(情報センター出版局)