韓国の代表的な伝統菓子に、ヤックァ(약과)があります。ヤックァは漢字で「薬果」と書き、ごま油や蜂蜜を使った「ユミルグァ(유밀과:油蜜果)」と呼ばれる菓子ジャンルのひとつです。
ヤックァは、油を加えた生地をさらに油で揚げて甘いシロップに浸すという、現代の感覚では敬遠されるようなお菓子ですが、油や糖が貴重だった時代にはこの上なく高貴な食べもので、宮中料理としても現代へ引き継がれています。
また韓国の伝統的な食べものには、名前に「薬」(ヤッ:약)のつくものがしばしばあり、ヤックァもそのひとつです。「ヤッ」のつく食べものにはたいてい蜂蜜やごま油、シナモン、松の実などが使われており、体によいこれらの食材を「薬」ととらえていた背景があります。
ヤックァの種類
チャプサルヤックァ(찹쌀약과):もち米のヤックァ
小麦粉だけでなく、もち米粉も生地の主材料としているもの。もともとヤックァはもち米粉を入れるものでしたが、近年小麦粉だけのヤックァが増えたため、もち米粉の入ったものは敢えて「チャプサルヤックァ」と呼ばれています。
モヤックァ(모약과):四角いヤックァ
「モ」とは角を意味します。もともとヤックァは菊の形をした、ある程度ボリュームのあるものでしたが、近年は四角いミニサイズでパイのような層状生地という、おしゃれな仕上げが増えています。
ケソンヤックァ(개성약과):開城ヤックァ
開城は高麗時代(918~1392年)からの古都。ケソンヤックァの明確な定義はありませんが、四角く層状に仕上げた「モヤックァ」を、一般にケソンヤックァと呼ぶようです。開城は、日本でいえば京都や鎌倉のように、古都独特の品格や懐古的な美しさがイメージされるようです。
クンジュンヤックァ(궁중약과):宮中式ヤックァ
もち米粉の入った、大きな菊形をした昔ながらのヤックァ。