プルコギ(불고기)

韓国の「焼肉」には、肉の種類や部位、味つけ、焼き方などによってさまざまな種類がありますが、そのひとつに「プルコギ」(불고기)があります。

プルコギのプル(불)は火を、コギ(고기)は肉を指し、もともとは「火で炙って食べる肉」という意味ですが、現在「プルコギ」といえば、牛の薄切り肉を野菜とともにタレにつけこんで焼く料理のことです。

プルコギに使う牛肉は、モモやカタなど赤身の多い部位を薄く切った肉がよく使われます。
肉をつけこむタレは、醤油ベースに砂糖、酒、みりん、おろしにんにく、胡椒、すりごま、ごま油などを混ぜ合わせた甘口タイプが多く、りんごや梨のすりおろしを加えることもあります。また、副材料に使われる玉葱や長葱、にんじん、にら、きのこなどの野菜は、薄切りや細切りにして肉とともにタレにつけこんでおきます。

プルコギは、焼くときの鍋に特徴があります。
よく使われるのが、中央が山のように高く、縁がフライパンのように折り返されたジンギスカン鍋に似た鉄鍋です。タレにつけこんでおいた肉と野菜を、熱した鉄鍋に汁ごとのせると、鍋の斜面のところで肉と野菜が焼けるのと同時に、縁のくぼみに美味しい肉汁がたまり、それ一緒にすくって食べることができます。あるいは、すき焼き鍋のような浅い鉄鍋を使うこともあり、その場合も肉と野菜をつけ汁ごと炒め煮のように加熱調理します。

どちらの場合も、焼けた肉をサンチュなどにのせ、ご飯やサムジャン(薬味ダレ)なども一緒に包んで食べるスタイルが一般的です。

プルコギ
プルコギ

トゥッペギ プルコギ

プルコギの一種で近年流行しているものに、トゥッペギ プルコギ(뚝배기 불고기)があります。トゥッペギ(뚝배기)とは素朴な韓国式土鍋のことです。タレにつけこんだ牛肉と野菜を一人用のトゥッペギに入れ、だし汁または水を注いで煮た、具だくさんな鍋料理です。牛肉を炒めてから水を注ぐ場合もあります。ほかに、水につけておいたタンミョン(당면:韓国春雨)やきのこ、長葱、生の唐辛子などを入れるのが一般的です。

似たような料理にプルコギ チョンゴル(불고기 전골)がありますが、こちらは平たくて大きな鉄鍋に牛肉と野菜各種を彩りよく並べ入れて卓上で煮る、見た目にも豪華な鍋料理です。トゥッペギ プルコギが、一人用の小さな土鍋で作ってご飯やキムチとともに定食スタイルで供されるのに対し、プルコギ チョンゴルは数名分の具を盛り込んだ豪華な大鍋をグツグツ煮てから小鉢に取り分けていただきます。

トゥッペギ プルコギ
 

パッサッ プルコギ

朝鮮半島南部・蔚山ウルサン広域市内彦陽オニャン (언양)地方には、「パッサッ プルコギ」(바싹불고기)と呼ばれる、汁気の少ない独特なプルコギが伝わっています。「パッサッ」とはカリカリ、パサパサといった乾いた様子を表す擬声語です。
別名、「彦陽オニャンプルコギ」(언양불고기)、「彦陽式オニャンシッパサップルコギ」(언양식 바싹불고기)とも呼ばれます。

パッサッ プルコギは、ごく薄切りの牛肉をさらに刻んで濃い目のタレで和え、網焼きまたは鉄鍋に薄く広げて焼いた、乾いた仕上がりのプルコギです。一般のプルコギに入れるにんじんや玉葱、きのこなどの細切りの代わりに、みじん切りにした玉葱や長葱を少しだけ混ぜるため、見た目は肉ばかりで、薄く焼いたハンバーグのようにも見えます。

テジプルコギ

韓国語で肉(고기:コギ)と言えば牛肉(소고기:ソゴギ)、プルコギと言えば牛の焼肉を指しますが、庶民にはやはり安価で食べ出のある豚の焼肉「テジプルコギ」(돼지불고기)も人気があります。
テジプルコギは、コチュジャン(고추장:唐辛子味噌)やにんにく、生姜をきかせた濃厚なタレが特徴的です。

テジプルコギ
 

薬念研究所HP:キーワードで見る食文化2022年8月「プルコギ」より転載