コッチョリ(겉절이)

韓国料理における野菜の豊富さは言を俟ちませんが、中でも野菜の漬物や和え物の種類の多さ、食卓に上る頻度の高さは、豊富な副菜を携える韓国食文化の一側面といえましょう。
今回は、豊富な韓国の副菜の中でも、生野菜をヤンニョム(양념:薬味香辛料)で和えた「コッチョリ」(겉절이)と「チョレギ」(저래기)について見ていきましょう。

コッチョリ(겉절이)

コッチョリのコッ(겉)は「表面」「外面」を意味し、チョリ(절이)は「漬けること」「漬けたもの」を意味します。つまりコッチョリとは、表面だけ漬かったもの、「即席漬け」「浅漬け」をさします。
コッチョリのポピュラーなものでは、白菜を塩漬けしてからヤンニョムで和えた배추겉절이(ペチュコッチョリ)があります。これは外国人から見ると、白菜キムチそのものに見えますが、元来「キムチ」とは長期保存を前提とした漬物=発酵食品をさすため、ヤンニョムで和えただけのもの、漬けたてのものは「キムチ」と呼ばず「コッチョリ」と呼び分けられるのです。また、白菜キムチとして保存性を持たせるためには、白菜を半割りまたは1/4に切るなど、ある程度大きなかたまりで漬ける必要がありますが、コッチョリのように白菜を最初からバラバラにして作った場合、味はまんべんなく行きわたる一方で、保存がきかず短期間で食べきることが前提となります。このあたりが、「コッチョリ」と「キムチ」の境界線といえましょう。
白菜の中でもよくコッチョリに使われる品種として、「ポムドンベチュ」(봄동배추)と「アルベチュ」(알배추)があります。ポムドンベチュは春に収穫される品種で、小型で黄緑色の葉がターツァイ状に広がった独特な形をしています。アルベチュは、一般の白菜を手のひらサイズにしたようなミニ白菜です。どちらも、葉をバラすだけでほどよい薄さとサイズの葉が得られ、ヤンニョムの絡み具合や食感的にみてもコッチョリに大変適した野菜であることがわかります。

コッチョリ

また、白菜以外ではサンチュ、にら、えごまの葉などもコッチョリにされ、それぞれサンチュコッチョリ(상추겉절이)、プチュコッチョリ(부추겉절이)、ケンニプコッチョリ(깻잎겉절이)と呼ばれています。
そして、コッチョリのヤンニョムの配合を見ると、荒挽きや粉挽きの唐辛子、にんにく、生姜、魚醤、アミの塩辛、砂糖、それに刻んだ葱や玉ねぎ、にらを加えるなど、キムチのヤンニョムと似ていることがわかります。

コッチョリ

薬念研究所HP:キーワードで見る食文化2021年4月「コッチョリとチョレギ」より転載