チョルピョン(절편)つき餅

韓国の伝統的な餅菓子のひとつに、チョルピョン (절편)と呼ばれる素朴なつき餅があります。韓国の餅には、米またはもち米をまず粉に挽いてから蒸してつく工程を経るものが多くありますが、チョルピョンもそのひとつで、米粉を適度に湿らせてから蒸してつき、形作ったのちに模様のついた餅型で押して仕上げます。

もともと、チョルピョンは車輪模様や幾何学模様のついた平たい丸餅が一般的でしたが、近年は縞模様や葉っぱの形、あるいは貝の形をした餅型で押したり、色とりどりの餅生地を合わせて模様を作ったり、中に餡を入れたりと、さまざまな形態のチョルピョンが見られるようになりました。

チョルピョン
チョルピョン


■ 端午節のスリチュィチョルピョン

伝統的なチョルピョンとしては、米粉そのままの白いヒンチョルピョン(흰절편)と、よもぎを混ぜたスッチョルピョン(쑥절편)、あるいはスリチュィ(수리취)と呼ばれる野草(日本名はヤマボクチあるいはヤマゴボウ)の若葉を混ぜた、スリチュィチョルピョン(수리취절편)があります。


特に、旧暦5月5日の端午の節句では、スリチュィチョルピョン、スリチュィトッ(수리취떡)、チャリュンビョン(차륜병:車輪餅)などと呼ばれる、ヤマボクチの若葉を混ぜて搗いた車輪模様の餅を食べる風習がありました。端午の節句を韓国語ではタノジョル(단오절:端午節)またはスリンナル(수릿날)と言いますが、その「スリンナル」と音韻的・意味的につながりのあるスリチュィ(수리취)と「車輪」(韓国語でスレバキ:수레바퀴)を結びつけ、厄除けやその年の豊作を願ってこの餅が食べられてきたという背景があります。


こうした伝統的なチョルピョンは、素材のもつ自然な甘みだけで糖類を加えずに作る場合が多く、蜂蜜や水飴をつけて食べることもあります。



チョルピョン


チョルピョン

■ チョルピョンのバリエーション

昨今は、餅生地に工夫を凝らしたり中に甘い餡を入れたりと、現代人の嗜好に合ったバラエティ豊かなチョルピョンが見られるようになりました。米粉をこねるとき、あるいは搗くときに粉末状に加工された副材料を混ぜ込むことで、彩りや香りを生かしたチョルピョンを作ることができます。生地に混ぜる副材料により、次のような種類があります。

ホバッ チョルピョン(호박 절편)
かぼちゃの粉末を混ぜた、暖黄色のチョルピョン。

スリチュィ チョルピョン(수리취 절편)
ヤマボクチ(ヤマゴボウ)の葉を混ぜた、濃緑色のチョルピョン。

チョッコグマ チョルピョン(적고구마 절편)
紫芋の粉末を混ぜた、赤紫色のチョルピョン。

ペンニョンチョ チョルピョン(백련초 절편)
ウチワサボテンの実の粉末を混ぜた、サーモンピンクのチョルピョン。

トゥルケ チョルピョン(들깨 절편)
えごまの粉末を混ぜた、褐色斑点模様のチョルピョン。

ヒョンミ チョルピョン(현미 절편)
玄米のもち米で作った、黄土色のチョルピョン。

オッチョルピョン(옥절편)
白、緑、紫、黄などで色とりどりに仕上げた、キャンディ状の丸いチョルピョン。オッ(옥)は玉を意味します。

パッソ チョルピョン(팥소 절편)
小豆餡入りチョルピョン。パッソは小豆餡の意味。薄い餅の間に甘い小豆餡を挟んで仕上げます。

アンコ チョルピョン(앙꼬절편)
パッソ チョルピョンに同じ。アンコは日本語。

アングム チョルピョン(앙금절편)
餡入りチョルピョン。アングムは豆類の澱粉、餡を意味します。


■ 餅型・トクサル

チョルピョンなどの餅に凹凸の模様をつける道具(餅型)を、韓国語でトクサル(떡살)といい、韓国の餅菓子づくりでは重要な道具のひとつです。トクサルには、木や白磁を彫り込んだ丸いスタンプ状のものや、スタンプ部分の上に棒状の持ち手がついたもの、細長い木材に模様つきの丸い凹みが数個あるもの、細長い木材全体に模様が彫り込まれているものなど、いろいろな形態があります。トクサルは古くから使われてきた道具ですが、近年その工芸品としての素晴らしさが見直され、伝統模様に洗練が施されたトクサルが新たに作られています。


また、トクサル模様のパターンを版画のようにデザインした韓紙や包装紙、食器、布製品、文房具やアート作品も現れたり、チョルピョンの現物そっくりのカラフルな石鹸まで販売されており、その美しさに魅了されます。



餅型・トクサル


薬念研究所HP:キーワードで見る食文化2000年4月「チョルピョン(절편)つき餅」より転載