きゅうりが季節と関係なくハウス栽培されるようになって久しいですが、旬は何といっても夏。そしてこの時期に喜ばれる韓国の伝統料理に、きゅうりを主材料とした「オイソン」(오이선:きゅうりの膳)があります。
韓国宮中料理の流れを汲む「膳」という調理法については、このコーナーでもすでに何度か触れましたが、「膳」は主に植物性の主材料を使い、具をはさんだり混ぜ込んで加熱した、手間のかかった上品なおかずを意味します。「膳」がつく料理は、どちらかというとメインディッシュにはなりにくく、手間の割に目立たない存在となっていますが、その中において「オイソン」は、味覚的にも視覚的にも健康志向的にも現代韓国人のテイストに合うのか、地味ながら静かな人気を保ち続けているようです。
オイソンは決して豪華な料理ではありませんが、伝統的な宮中料理や班(パン)家(ガ)料理(李氏朝鮮王朝時代の両班(ヤンバン)など名家で作られていた料理)のコースにおける前菜として、あるいは家庭でも、新築後や結婚後などに客人を招いたときのもてなし料理として、しばしば登場します。色鮮やかな見た目と、冷たく歯触りのよい食感、上品な味わいのオイソンは、老若男女を問わず喜ばれる一品といえましょう。